「なんだ、あの山は!?」岩船山と高勝寺|子授け地蔵さまと600段の絶景

岩船山と高勝山ガイド岩船山の岩肌の画像

※この記事の情報は2026年6月時点のものです。お参りの時間やご開帳の日、交通の状況は変わることがありますので、お出かけ前に最新情報をご確認くださいね。

栃木シティの試合で岩舟(いわふね)の町においでくださった皆さん。岩舟駅に降り立ったとき、目の前に「ドーン」とそびえる、岩肌むき出しの迫力ある山に驚かれませんでしたか?

「なんだ、あの山は!?」——そう思った方も多いはずです。

あの山が、岩舟町のシンボル「岩船山(いわふねやま)」。そして山のてっぺんには、子授け・子育て・安産のお地蔵さまとして古くから親しまれてきた「高勝寺(こうしょうじ)」があります。

ちょっと近寄りがたい見た目ですが、実はとてもあたたかい、いのちに寄り添ってきたお山なんですよ。今日は、地元に住むわたし(ふねこ)が、その魅力をゆっくりご案内しますね。

岩船山 西側からの全景
西側から見た岩船山。岩肌の迫力が伝わってきます

目次

岩船山ってどんな山?

岩船山は、標高172.7メートル(およそ173メートル)。銅山で知られる足尾(あしお)の山なみの、いちばん南のはしっこにある山です。

名前の由来は、その姿。横から見ると、ちょうど「船」のような形をしているからだと言われています。

そして見た目のいちばんの特徴が、あのごつごつした岩肌。これは「岩舟石(いわふねいし)」という石を、昔からたくさん切り出してきたためなんです。お墓や石垣などに使われてきた、地元自慢の石なんですよ。

この岩船山には、いわば3つの顔があります。

  • 祈りの山 … 山頂の高勝寺と、子授けのお地蔵さま
  • 石の山 … 岩舟石を切り出してきた、はたらく山
  • 撮影の山 … 戦隊ヒーローもののロケ地としても有名(くわしくは記事①・②でも触れています)
    ちなみに③の「撮影の山」について、もう少しだけ。採石が終わったあとの広々とした場所は、火薬を使った迫力ある爆破シーンが撮れる、全国でもめずらしい場所なんです。そのため戦隊ヒーローものや時代劇などの撮影ロケ地として、50年近くも使われ続けてきました。子どもの頃にテレビで見た、あの崩れた岩肌……実は岩船山だった、なんてこともあるかもしれませんね。

ひとつの山に、こんなにいろいろな表情がある——。眺めているだけでも、なんだか味わい深いお山なんです。


山頂の高勝寺と「岩船地蔵尊」さま

岩船山のてっぺんにあるのが、天台宗のお寺「高勝寺」です。

今からおよそ1250年前、奈良時代の宝亀(ほうき)年間(770年ごろ)に、弘誓坊明願(ぐぜいぼうみょうがん)というお坊さまが開いたと伝えられています。とても歴史の長いお寺なんですね。

ご本尊は、「生身(しょうじん)の地蔵尊」と呼ばれるお地蔵さま。このお地蔵さまには、こんなお人柄(?)があると言われています。

亡くなった方をあたたかく胸に抱いてくださると同時に、子授け・子育て・安産を見守ってくださる——。

つまり、いのちの「送り」「授かり」の、両方にそっと寄り添ってくださるお地蔵さまなんです。なんだか、とてもやさしい気持ちになりますね。

子宝に恵まれたいと願うご夫婦が、遠くからもお参りに訪れる場所として知られていて、「日本三大地蔵」「日本三大子授け地蔵」のひとつにも数えられているそうですよ。

ちなみに、山頂までの参道の途中には、開山のお坊さまとお地蔵さまが出会った場所と伝わる「縁結びのお地蔵さま」もいらっしゃるそうです。子授け・子育て・安産に、ご縁結びまで——なんとも心強いですね。

ご夫婦おそろいで持てる子授け・子育てのお守りや、ご祈祷(子授け護摩)の授与品もあるそうですよ。お参りの記念に、お地蔵さまのおまもりをいただいて帰るのも、すてきですね。

高勝寺 本堂
いのちにやさしく寄り添う、高勝寺の本堂

四代将軍さまも「岩船地蔵の申し子」?

おもしろい言い伝えもあります。

江戸時代、三代将軍・徳川家光(いえみつ)の側室だったお楽(らく)の方(のちの宝樹院)が、この岩船地蔵さまを深く信仰していたそうです。江戸城に入るときにも岩船からお地蔵さまをお迎えして、子孫の繁栄を祈った——。

そして、そのご縁で生まれたのが、四代将軍・徳川家綱(いえつな)。家綱は「岩舟地蔵の申し子」とも呼ばれたと伝えられています。

将軍さまにまつわるお話が残っているなんて、ちょっと誇らしいですね。その後、高勝寺は徳川将軍家に大切にされ、立派なお堂が次々と整えられていきました。

願いがかなったら「足型」を

もうひとつ、あたたかい言い伝えを。

古くは、子授けの願いがかなった方が、お礼参りに奥の院のお地蔵さまをたずね、台座にお子さんの足型をつけて感謝を伝える——そんなあたたかい習わしも伝えられています。お地蔵さまに「ありがとうございました。どうかこの子が健やかに育ちますように」とご報告する、心あたたまる風習ですね。

💡 ご本尊は秘仏(ひぶつ)で、ふだんは扉が閉じられています。毎年10月23日ごろ(秋のお彼岸)にご開帳されると言われていますので、お地蔵さまにお会いしたい方は、その時期を目指してみてくださいね。日にちは念のため公式サイトでご確認を。

自然とともに、姿を変えてきたお山

実はこの岩船山、2011年の東日本大震災のときに、山のいくつかの場所が崩れました。北の尾根にあった奥の院へ渡る橋も落ちてしまい、今は昔の場所へ行くことはできません。

それでもお地蔵さまは、近くの安全な場所にお移りになって、今も変わらず私たちを見守ってくださっています。長い長い年月を、自然とともに姿を変えながら歩んできたお山——。そう思うと、いっそう愛おしく感じられますね。


春と秋の「お彼岸」は、賑わいの季節

岩船山がいちばん華やぐのが、春と秋のお彼岸です。

昭和の中ごろ(1960年代)までは、お彼岸になると関東じゅうからお参りの方が押し寄せて、岩舟駅もたいへんな人出だったそうです。高勝寺の参道には屋台がずらりと並び、それはそれは賑わったと伝えられています。

今でもお彼岸には、ご先祖さまの供養やお願いごとのために、たくさんの方がお参りに訪れます。

地元では、お彼岸のお供えに「ぼたもち」が欠かせません。甘くてやさしいぼたもちは、昔から何よりのごちそうだったんですよ。


ご先祖さまをやさしく見守る、いのちの霊山

少しだけ、しんみりしたお話も。

岩船山は古くから「霊魂のふるさと」とも呼ばれ、ご先祖さまの魂が帰ってくる場所として大切にされてきました。「関東の高野山(こうやさん)」と呼ばれた時代もあるほどです。

境内には、亡くなった方や水子(みずこ)さんを供養する場所があり、昔から多くの人がここで静かに手を合わせてきました。

——霊場(れいじょう)と聞くと、少し身がまえてしまうかもしれませんが、どうかご安心を。ここは「おどろおどろしい場所」ではなく、大切な人を想い、手を合わせるための、静かであたたかな場所なんです。

南北朝時代の武将・新田義貞(にった よしさだ)も、この高勝寺で病気平癒(へいゆ)を祈り、ご利益を得たという言い伝えも残っています。昔の人も今の人も、それぞれの願いを胸に手を合わせてきた——。そう思うと、不思議と心が落ち着くお山なんですよ。

高勝寺本堂の正面からみた外観画像。

見どころ|立派な文化財と、山頂の絶景

お参りのあとは、ぜひ境内の見どころもゆっくり楽しんでくださいね。

朱色が美しい「三重塔」と「山門」

境内には、江戸時代中期に建てられた三重塔(さんじゅうのとう)山門(さんもん)があります。どちらも栃木県の指定文化財です。

  • 三重塔:高さ約19メートル。寛延(かんえん)4年=1751年の建立。鮮やかな朱色と、細やかな彫り物が見事です。
  • 山門:弁柄(べんがら)塗りの堂々とした門で、県内随一の大きさとも言われています。

ほかにも、岩舟石を土台にした鐘楼堂(しょうろうどう)など、見ごたえのある建物が並んでいます。

高勝寺 三重塔と山門
朱色が美しい三重塔(左)と、県内随一とされる山門(右)

600段の先に広がる、関東平野の大パノラマ

ふもとから登る表参道には、なんと600段の石段があります。登りきった山頂からは、関東平野がぐるりと一望!空気の澄んだ晴れた日には、遠くに富士山が見えることもあるんですよ。

がんばって登ったご褒美にふさわしい、本当にすばらしい眺めです。

岩船山 山頂からの絶景
山頂からは関東平野が一望。晴れた日には遠くに富士山も

行き方は2通り|歩いて登る/車で登る

岩船山へは、歩いて登る方法と、車で登る方法があります。体力やご予定に合わせて選んでくださいね。

🥾 歩いて登る(山好きさん・元気な方に)

ふもとの登山口から、600段の石段を登っていきます。途中で休みながらでも、元気な方なら往復2時間ほどを目安に考えておくとよいと思います(あくまで目安ですので、無理のない範囲で)。

石段はなかなかの段数ですので、歩きやすい靴でお越しくださいね。

岩船山 登山口
岩船山の登山口。この先600段の石段を登って高勝寺へ

🚗 車で登る(歩くのが不安な方に)

実は、山頂近くの仁王門(におうもん)のわきまで、車で上がれるんです。急な坂道・細い山道ではありますが、ふもとから10分かからずに登れますよ。

ただし、わたしのような方向音痴さんは、ここでちょっと注意です。

  • 道は車のすれ違いがむずかしい細い箇所があります。対向車に気をつけて、ゆっくり進んでくださいね。
  • 山に入るとスマホの電波が不安定になる場所があります。ナビが急に途切れることも。心配な方は、地図をスクリーンショットで保存しておくと安心です。
  • 夜は街灯がほとんどなく、とても暗くなります。お参りは、できるだけ明るい時間帯に済ませるのがおすすめです。
岩船山裏参道・岩船山頂登り口の目印の立て看板の画像
岩船山の駐車場
左:歩いて向かう方用の駐車場/右:山頂・仁王門わきの駐車場

お参りの前に、知っておいていただきたいこと

はじめての場所で困らないように、地元からそっとお伝えしますね。

  • 🕘 受付は9時〜16時ごろのようです(念のため公式サイトやお電話でご確認を/☎0282-55-2014)。ご祈祷やお守りをご希望の方は、午後の早めまでに着いておくと安心です。
  • 🚻 山の上にトイレ・お店はほとんどありません。お手洗いと飲み物は、登る前に済ませておくのが安心です。
  • 👟 歩きやすい靴で。石段も境内も、ヒールやサンダルはちょっと大変です。
  • 🙏 霊場としてのマナーを。ご先祖さまの供養の場所でもありますので、墓所のあたりでは静かにお参りくださいね。
  • ☀️ 夏は暑さ対策を。日差しをさえぎるものが少ない場所もあります。帽子や水分をお忘れなく。

無理をせず、ご自分のペースで。それがいちばん大切ですよ。


ちょっと寄り道|「日本一小さな資料館」

岩船山のふもとには、「岩舟石の資料館」という、とてもユニークな建物があります。石でできたレトロな外観で、「日本一小さな資料館」とも言われているんですよ。岩舟石とともに歩んできた、この町の歴史を感じられる小さなスポットです。お時間があれば、のぞいてみてくださいね。

岩舟石の資料館
「日本一小さな資料館」と言われる、岩舟石の資料館

おわりに

迫力ある見た目から「なんだ、あの山は!?」と驚かれる岩船山。でも近づいてみると、子授けのお地蔵さまがやさしく見守る、あたたかな祈りのお山でした。

栃木シティの観戦で岩舟までおいでくださった皆さん。もし少しお時間があれば、町のシンボルであるこのお山にも、ぜひ手を合わせていってくださいね。遠くから応援に来てくださること、地元の人間として、本当にうれしく思っています。

どうぞ、道中もお参りも、お気をつけて。


🔗 関連リンク・参考サイト

お寺・お地蔵さまについて(公式・参考)

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